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Fuel Cell #1 ゼロエミッションへの取り組み

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 Fuel-cell cars create zero emissions 

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水素エネルギー社会に向けた日本政府の取組
燃料電池車によるゼロエミッション化

 悪化する地球環境を改善するには、持続可能な(サスティナブル)社会の実現が不可欠。 これには、循環型・低炭素・自然共生の3つの要素が必要だと言われている。 人間が営む経済行為・社会生活・文化活動は、自然環境に根差した考えと行動であるべき。 環境を汚染したり気候を混乱させる廃棄物を排出しないゼロエミッションへの取り組みは、今、様々な分野や地域で進められている。

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米国が気候変動における指導的立場を放棄しても、他国は路線堅持。
トランプ政権下の米国は地球で最もクリーンで環境に優しい国であり続けるが、
ビジネスや雇用を犠牲にしない、らしい。(2017年6月、パリ協定脱退方針を宣言)
パリ協定:COP21Pari 国連 気候変動枠組条約 第21回 締約国会議 196ヶ国

 持続可能な社会を目指し、国際機関や先進国首脳会議で議論して協定が結ばれ、国/州の政府や地方自治体が指針を示して法律や条例を定める。 調査/研究機関は過去/現状や将来を分析したり、基礎研究から問題解決への突破口を見出す。 環境に大きな影響を及ぼす大企業は環境視点で中/長期事業計画を策定。 そして、ゼロエミッションに貢献する新たなデバイス/システム、植物系素材や生分解性プラスチックなどの新素材が開発される。 これを実用化して組み込んだ工業製品は、大量生産と生産技術革新で価格が下がり普及する。 また、政府の施策(推進機関の設置や補助金)が開発や普及促進を牽引したり後押している。

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Source from Bloomberg NEF

 例えば、太陽光発電パネル。 約20年前は家庭用で1Wあたり数万円していたものが、現在は約500円/Wに。 一般家庭で3kWの太陽光発電を導入すると、150万円ほどになった。 パネルモジュールの単価は現在も下がり続けており、日本でも60円/Wの発電パネルが販売されている。 現在の自家発電コストは1kWhあたり約40円ほどで、FIT価格も年々下がり続けている。 世界の産業用太陽光発電の発電コストは、2009年の約35円から2017年の約10円/kWhに下がっている。

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左:日産リーフ用 LiB 40kWh 82万円 (8年間/16万kmの容量保証)
8セル(4直列×2並列)×24モジュール、約350V=3.7V×96直列、303kg
右:モジュール内の AESC製 パウチ型リチウムイオン電池セル
Image via newsroom.nissan-global.comNissan LEAF US Battery Factory

 コストダウンが進むのは、風力発電やリチウムイオン電池も同じ。 世界の産業用風力発電の発電コストは、1984年 約70円から2017年 約8円/kWhに。 リチウムイオン電池を用いた車載用の駆動電源コストは、2010年 約11万円から2018年 約2万円/kWhに下がっている。 また、太陽光発電パネルよりも面積当たりの発電効率が高い熱電発電素子(ペルチェ素子)もコストが下がり、様々な機器に搭載され始めている。

■話題の中心を、自動車に。 20世紀初頭にフォードが燃焼式エンジン自動車ICEVを大衆向けに発売して以来、 生産システム改善、低コスト化、標準化、大型化、大排気量化、電子制御化、空力抵抗低減、高速度/ハイパワー化、燃料改善、燃焼効率改善、排ガス浄化、高級志向化、安全性改善、高機能材料、小型軽量化、低燃料消費、ダウンサイジングなど、価値観の変遷と共に自動車メーカーの注視するトレンドは次々と変化してきた。

 現在は、地球規模の気候変化、都市化の進行、年齢別人口構成比の変化、インターネット社会を背景に 自動車は歴史的な転換期を迎えているようだ。 具体的には、地球温暖化、大都市の大気汚染、運転者の高齢化への対応が求められている。 喫緊の課題は、排気ガスのゼロエミッシン化。 何故なら、人為的に排出される二酸化炭素CO2の増加が、地球温暖化の主な原因とされているから。 温室効果ガスと呼ばれるCO2やメタンCH4等は地表からの放射熱を吸収し、CO2の影響量が最も大きい。 また、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMや硫黄酸化物SOxは、大気汚染や酸性雨の原因となっている。

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 大気汚染物質の排出源
図は、European Environment Agency (EEA)より借用。
Contribution of the transport sector to total emissions of the main air pollutants

 一方、大量の排気ガスを出す化石火力料発電所や大型船舶等もゼロエミッシン化の対象になりつつあり、CO2を回収/貯蔵するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)システムが一部の発電所に導入され始めている。 また、既に燃料の脱硫化や排ガス浄化装置により、NOx、SOxやPMの回収が進んでいる。

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ディーゼル乗用車のNO2排出規制値
Source from mlit.go.jp, epa.gov, dieselnet.com, ereca.eu

 都市部では、環境影響度が大きい自動車のゼロエミッシン化が急務に。 これまで、燃焼式エンジンでは、燃料の低硫黄化、三元触媒の導入や燃焼効率の改善で、SOx、NOx、HC、CO2の排出が減少した。 軽油などを用いる高圧縮で高温燃焼のディーゼルエンジンでは、NOx対策として尿素SCRシステム、排気再循環システムEGRやNOx吸蔵還元触媒が、また、PMの回収/燃焼にはDPF(Diesel Particulate Filter)が開発・導入された。 現在も燃料改質などにより、現状の熱効率 約40パーセントを更に高め、燃料消費率を改善し、NOxやCO2の削減を目指している。

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乗用車のCO2排出規制値
Source from mlit.go.jp, epa.gov, ereca.eu

 CO2を排出しない自動車であれば、先ずバイオ燃料車。 サトウキビやトウモロコシ等の有機資源を原料としたバイオマスエタノールではカーボンニュートラルになる。 また、燃料に水素を用いる水素エンジン車(ハイドロジェン車)も考えられる。 しかし、燃焼式エンジンでは、空気中の窒素も同時に燃焼し、有害なNOxを排出する。 この対策として、酸素O2のみを燃料に供給して燃焼させる方法もあるが、コストや安全性が問題となり実現が困難。 また、このハイドロジェン車の燃料は液体水素で、超低温(-253℃)で高コスト(約1100円/kg)。 それ故、保存容器の断熱コストが問題になったり、蒸発(ボイルオフ)で減少する事から毎日稼働する自動車に限られる。

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 図は、GTBoard.comのFacebookより借用。

 CO2の排出削減は走行中だけの話ではない。 素材/車体/燃料の製造からメンテナンス、廃棄までのライフサイクル全体で評価(LCA)されるべきもの。 また、環境への負荷はCO2等の排出ガスだけではなく、様々な要素がある。 騒音/振動への対応もあり、燃焼式エンジンの環境対策には多くの課題が残されている。

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ロンドンの通行規制とアメリカのエンジンブレーキ制限の看板
Image via autocar.jp, drivenfordrives.wordpress.com

 CO2削減、大気汚染防止を目的に、有害なガスを出さないセロエミッション車ZEV(電気自動車や燃料電池車など)の販売割合を義務付ける州や自治体が増えている。 これは自動車メーカーに対する規制だが、運転者に課す制限やインセンティブの付与もある。 例えば、新たに制定した排ガス基準に満たない車両に対し、都市への進入を禁止する自治体がある。 また、騒音防止のために大型デーゼル車に対しエンジンブレーキを禁止している区間がある。 逆に低公害車には、ホブ/ホットレーン1名乗車走行の許可や有料車線/道路の通行料免除を実施している自治体がある。

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カリフォルニア州の通行許可ステッカー
白は完全な無公害車、緑はハイブリッドカー用
HOT用車載器を搭載したハイブリッドカーや電気自動車は、
DMV(州陸運局)に申請すれば無料で有料レーン等が通行できる。
詳細は、下記ブログ記事を参照。
Toll Road #5 アメリカの有料道路 5/6US Highway アメリカの高速道路

 日本には、エコカー減税、グリーン化特例がある。 これにより、排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車は、自動車取得税、自動車重量税、自動車税や軽自動車税(地方税)の免除や軽減が受けられる。 また、電気自動車BEV、プラグインハイブリッド車PHEV、燃料電池車FCVやクリーンディーゼル車CDVには、国からのCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金や地方自治体からの補助金交付がある。 事業用自動車を対象にした次世代自動車等の導入補助金もある。
 (※2019年度の税制改正では消費税の増税に合わせて自動車取得税が廃止されるが、エコカー減税や地方税の自動車税も改正の方向で検討されている。)

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Image via cev-pc.or.jp

 しかし、登録から13年を超えると、電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス自動車等の環境性能に優れた自動車以外は増税される。 自家用車は標準課税額に加えて、重量税で約22パーセント(18年以上は54パーセント)、自動車税で約15パーセント(ディーゼル車は11年を超えた時から、軽自動車は20パーセント)重課される。 日本では、新しい自動車よりもNOxやCO2の排出量が多い古い自動車は増税、という事らしい。 新しい自動車は製造過程で資源やエネルギー消費とCO2排出があるが、古い自動車に乗り続ければこれが無い上に廃棄という環境負荷も無い。 古い自動車は海外に輸出され、別の場所で有害な排ガスを出して走っている。
アメリカ:カリフォルニア州は、ZEV規制により年間6万台以上販売する自動車メーカー(クライスラー、フォード、GM、トヨタ、日産、ホンダ)に対し、4.5パーセントのZEV(BEV,PHEV,FCV)販売を課している。 (違反した場合は罰金、又は他社からクレジットを購入) 今後は、2020年に約9.5%、2025年に22%となる。 2018年より、ハイブリッド車HVはZEVから除外され、BMW、ダイムラー、現代、起亜、マツダ、VW、スバル、ジャガー、ランドローバー、ボルボもZEVの販売割合は異なるが、対象となる。 2050年以降は、ガソリン車とディーゼル車の販売が禁止される。 締め付けレベルは異なるが、CA州の他に CT、ME、MD、MA、NJ、OR、NY、RI、VAの9の州とDC(米国自動車市場の約1/4)にもZEV規制が適用されている。 更にDE、NM、PA、WAも環境規制にカリフォルニア州の規制を適用している。

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California and nine "ZEV states" plus "Section 177" states
Source from insideevs.com

フランス:2040年までに国内におけるガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止する方針だが、ハイブリッド車は対象外。
イギリス:2040年までにガソリン車とディーゼル車の自国での新規販売を禁止する方針。 モーターとガソリンあるいはディーゼルエンジンを組み合わせたハイブリッド車の販売も40年までに終了。
ドイツ:2030年までに発火燃焼エンジン(ディーゼル/ガソリン自動車)を禁止する方針。
オランダ:2025年以降、ガソリン車とディーゼル車の新たな販売を禁止。
ノルウェー:2018年から2029年あたりでの化石燃料車禁止を検討中。
スウェーデン:環境相がEU全体でガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すべきと発言。
中国:中国自動車技術会は2016年10月に「省エネルギー・新エネルギー自動車技術ロードマップ」を発表。 ガソリン車販売禁止工程表の作成に着手。 ニューエネルギーヴィークル(NEV法を2019年に実施し、中国国内で自動車を製造する事業者に対してNEV(HVやEV)の販売目標達成を義務化する。

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燃費規制が導入済み、又は導入途上の国々

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A Toyota hydrogen fuel-cell semi-truck and a Toyota Mirai

次の記事 「Fuel Cell #2 燃料電池車の開発」へ続く。

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