Fuel-cell cars create zero emissions
燃料電池車FCVの普及には、解決すべき技術的問題が山積している。 水素は常温/常圧では爆発性の気体。 化石燃料のように自然界から収集できない。 いかにして安全に大量に、且つ、安価に製造・貯蔵・運搬・利用するかが課題である。 電力貯蔵の高密化はリチウムイオン電池技術の進展により可能となり、バッテリー式電気自動車BEVが実用化された。 しかし、水素に関する様々な技術は発展途上にある。
現状では、水素製造工場、水素運搬や燃料電池車FCVに水素を供給する水素ステーションの設置(約4.6憶円/ヶ所)など、社会インフラの整備にも莫大な投資が必要になる。 この水素でFCVが発電する電気コストは、送電網につながるEV用充電ステーションの電気に比べ、現状レベルで約4倍になるとの試算もある。
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水素は、天然ガスなどの化石燃料、森林資源や廃材などのバイオマスから化学反応により取り出すことが出来る。 また、製鉄、苛性ソーダ(食塩電解)などの工場で発生するガスから分離した副生水素もある。 石油精製では原油から水素を製造し、この水素をガソリンや灯油等の石油製品の製造に用いている。 ここには余剰の水素製造能力(日本は47億Nm3/年)があり、燃料電池車FCVの普及初期には十分な量だと推定されている。
大電力(水素1Nm3あたり約5kWh)が必要になるが、水に電気を流して電気分解しても水素が得られる。 (水素エネルギーナビ) この電力には、CO2を排出しない風力、太陽光、太陽熱、バイオマス等、再生可能エネルギーの投入が期待されている。 光触媒やISプロセスもCO2を排出しない水素製造技術として研究が続けられている。
水素はガソリンに比べ、重量当たりのエネルギー密度は約3倍と高い。 しかし、気体の水素ガスは、体積当たりのエネルギー密度が約3000分の1と低い。 従って、水素ガスを貯蔵・運搬する場合は、密度を高める必要がある。 また、燃料電池車FCVに搭載可能な水素タンクのサイズでガソリン車並みの航続距離を確保するには、高密度化した水素が必要になる。
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水素を効率的に高密度で運搬したり貯蔵する方法として、水素を吸収反応させる媒体(吸蔵合金、有機ハイドライドMCH、ホワイトグラフェン、単層カーボンナノチューブ、アンモニア等)が研究開発されている。 燃料電池車FCVの開発当初は水素吸蔵合金が採用されていたが、重量あたりの吸蔵量が小さいため、重い燃料タンク(数百kg)となっていた。 また、エネルギー密度が水素ガスの約800倍になる液体水素では、水素ガスを液体にする為に投入するエネルギー量が大きく(約1kWh/Nm3、11kWh/kg)、また、貯蔵タンクは蒸発(ボイルオフ)を防ぐ高断熱化を要す。 この様な状況下、消去法からか、現在は高圧縮水素ガスが採用されている。
乗用車に積載可能な燃料タンク容積は、100リッターほど。 現在の燃料電池の発電効率でガソリン車並みの航続距離を確保するには、このタンク容量の約700倍の水素ガスが必要になる。 逆算すると、700分の1に高圧縮した水素ガスをタンクに充填しなければならない。
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高圧縮された水素を封入するタンクは、金属で強度を確保しようとすると肉厚となり、空でも200kg近くになってしまう。 しかし、炭素繊維強化プラスチックCFRPを主とした高強度材料を用いた三層構造にする事で、強度確保と軽量化が可能になり、約半分の約92kg(MIRAI)になった。 容積や重量は、CNG車やLPG車とほぼ同じである。 尚、この高圧水素タンクは、世界統一技術基準(GTR容器)の基になっている。 (※高圧水素容器/水素自動車の最高充填圧力87.5MPa/公称使用圧力70MPa、マイナス40℃~85℃)
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現在、世界基準となった燃料電池車FCVの水素タンク圧力は70MPa。 水素ステーションでは更に高い82MPaでの貯蔵となっている。 この圧力は大気圧の約700倍、及び820倍で、水素ガスの体積は約700分の1になる。 気体は圧縮されると温度が上昇するので、仮に断熱圧縮で単純計算すると、1800℃近い現実離れした温度上昇となる。 気体の圧縮と発生する熱の冷却には、大きなエネルギーが必要になる。
例えばトヨタの燃料電池車FCV Miraiの122.4リットル水素タンクには、1気圧(0.1MPa)20℃の水素ガスで換算すると、約84.6キロリットル(約7.06kg)の圧縮水素ガスが貯蔵できる。 タンク残量圧10MPaから開始して70MPaまで充填すると、約6.08kg(1気圧20℃換算で72.5キロリットル)の水素ガスが補充される。
水素ガス製造時の0.1MPaから82MPaへ圧縮されて70Mpaでタンクに充填されるまでの仕事量を計算すると、約30.6kWh/6.08kg(110MJ/6.08kg、5.04kWh/kg、18.2MJ/kg、453Wh/Nm3、電気代 約83円/kg)になる。 この電力 約30kWhがあれば、電気自動車BEVなら約300kmも走行できる。 (※1気圧0.1MPa 20℃から70MPaへ圧縮する理論上の仕事量は、等温圧縮で7.9MJ/kg、断熱圧縮で16.8MJ/kgとなる。)
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水素ステーションで82MPaへ高圧縮された水素ガスは、ディスペンサーから燃料電池車FCVの水素タンクに充填されて70MPaに下がる。 通常、膨張して圧力が下がれば温度も下がるが、水素ガスの場合は逆。 ジュール・トムソン効果により、ホースやノズル等の狭路を流れる際に水素ガスの温度は上昇する。 その為、充填する水素ガスを冷凍機でマイナス40℃に冷却(プレクール)している。 また、過充填や水素タンクの過負荷を防止する為、タンク内の圧力と温度情報をFCVからディスペンサーに送る通信充填が採用され、外気温も考慮した水素充填制御になっている。
水素ガスは高圧縮するほど運搬や貯蔵の効率は上がる。 しかし、圧力に比例して圧縮/冷却に要するエネルギーが増え、単に充電だけのEVに比べて余分なCO2排出の要因になっている。 その為、ホンダでは開発初期からClarityの初期モデル(2008年 FCX Clarity)まで水素ガス充填圧力を70MPaの半分の35MPaに設定していた。 35MPaであれば、従来のエンジン車よりもWell-to-WheellでCO2を削減できるが、70MPaではかえってCO2排出量を増やしてしまうと試算していたようだ。
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現在、日本には約100ヶ所に水素ステーションがあり、35MPa車専用の40MPa水素ステーション、35と75MPa両車対応の80MPa水素ステーションの2タイプとなっている。 35MPaの充填ノズルは70MPa車でも使えるので、70MPa車は35MPa/70MPaいずれも利用可能。 逆に、70MPaの充填ノズルは、35MPa車に接続できない仕組みになっている。 また、満充填に近い70MPa車に35MPaノズルを接続しても、水素ガスが逆流する事はない。
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水素ステーションでは、都市ガスやLPガスから水素を自前で製造/圧縮して販売したり、外部から購入した水素を圧縮して販売している。 前者はオンサイト型、後者はオフサイト型と呼ばれている。 大規模な水素製造装置で水素を製造した方が効率が良いが、運搬には高圧(45MPa)水素専用のタンクローリー(約4千万円/台)が必要になる。 それ故、工業用(光ファイバーや半導体製造)の水素は、オンサイト(自家製造)が主流で都市ガス、天然ガスLNGやメタノールから製造されている。 この水素製造装置は実用化が進んでおり、経済性も良い。
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現状のオンサイト型では、水蒸気改質で化石燃料から水素を製造しており、A重油を原料にすれば約280円で水素1kgが製造できる。 しかし、燃料となる水素製造でCO2を約11kgも排出している。 このCO2重量を走行1kmあたりで消費される水素重量(約0.01kg/km)で乗して、走行1kmのCO2排出量に換算すると、燃焼式エンジン車が走行で排出する量に近くなる。 燃料電池車FCVや電気自動車BEVは走行中に(Tanl-to-Wheelでは)CO2を排出しないが、電気や水素の製造で(Well-to-Tankで)燃焼式エンジン車よりも多くのCO2を排出している。
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利用段階でCO2を排出しない水素は、低炭素型のエネルギー媒体として有望で、様々なエネルギー源から製造することが可能。 但し、原料や製造方法によってコストや意義が大きく異なる。 上記通り、原料に化石燃料を用いると、製造段階で大量のCO2を排出する。 CO2回収/貯蔵にCCSを導入すると、電力コストや減価償却費を含めた水素製造コストは30~40パーセントも跳ね上がる。
水電解に再生可能エネルギー(風力や太陽光発電など)由来の電力が投入できれば、CO2の排出量が削減できる。 ただ、水素1kgの製造に必要な電力 約50kWhがあれば、電気自動車BEVなら約500kmも走行できる。 製造や圧縮で大量のエネルギーを消費し、且つ、製造方法によってはCO2を大量に排出する水素だが、貯蔵・運搬できるエネルギー媒体としてのメリットが大きい。 電力を水素等のガスに変換する”Power to Gas”が、再生可能エネルギーの間欠性やムラを補う方法の一つになる。
ホンダが、高効率の水素供給システムを2018年11月21日より販売を開始している。 固体高分子膜を用いた差圧式高圧水電解システム「Power Creator」で、水素製造能力は、2.5kg/日。 製造圧力82MPaで、貯蔵量は約11kg。 特筆すべきは、一般的な水電解(常圧)で必要だった除湿や圧縮に要するエネルギーを4分の1に減らしている事。 グラフより、約1180W/m3-H2(13.8kW/kg)から、約270W/m3-H2(3.8kW/kg)になっている事が読み取れる。
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現状では、水素製造工場、水素運搬や燃料電池車FCVに水素を供給する水素ステーションの設置(約4.6憶円/ヶ所)など、社会インフラの整備にも莫大な投資が必要になる。 この水素でFCVが発電する電気コストは、送電網につながるEV用充電ステーションの電気に比べ、現状レベルで約4倍になるとの試算もある。
水素ステーション (建設費約4.6憶円/ヶ所、運営費約45百万円/年)
整備費用の1/2~2/3に補助金(上限390百万円)、活動補助金(上限22百万円)
(2030年:目標建設費は2億円以下) Image via toyota.jp
整備費用の1/2~2/3に補助金(上限390百万円)、活動補助金(上限22百万円)
(2030年:目標建設費は2億円以下) Image via toyota.jp
水素は、天然ガスなどの化石燃料、森林資源や廃材などのバイオマスから化学反応により取り出すことが出来る。 また、製鉄、苛性ソーダ(食塩電解)などの工場で発生するガスから分離した副生水素もある。 石油精製では原油から水素を製造し、この水素をガソリンや灯油等の石油製品の製造に用いている。 ここには余剰の水素製造能力(日本は47億Nm3/年)があり、燃料電池車FCVの普及初期には十分な量だと推定されている。
大電力(水素1Nm3あたり約5kWh)が必要になるが、水に電気を流して電気分解しても水素が得られる。 (水素エネルギーナビ) この電力には、CO2を排出しない風力、太陽光、太陽熱、バイオマス等、再生可能エネルギーの投入が期待されている。 光触媒やISプロセスもCO2を排出しない水素製造技術として研究が続けられている。
水素はガソリンに比べ、重量当たりのエネルギー密度は約3倍と高い。 しかし、気体の水素ガスは、体積当たりのエネルギー密度が約3000分の1と低い。 従って、水素ガスを貯蔵・運搬する場合は、密度を高める必要がある。 また、燃料電池車FCVに搭載可能な水素タンクのサイズでガソリン車並みの航続距離を確保するには、高密度化した水素が必要になる。
体積及び重量当たりの燃焼熱量比較
水素を効率的に高密度で運搬したり貯蔵する方法として、水素を吸収反応させる媒体(吸蔵合金、有機ハイドライドMCH、ホワイトグラフェン、単層カーボンナノチューブ、アンモニア等)が研究開発されている。 燃料電池車FCVの開発当初は水素吸蔵合金が採用されていたが、重量あたりの吸蔵量が小さいため、重い燃料タンク(数百kg)となっていた。 また、エネルギー密度が水素ガスの約800倍になる液体水素では、水素ガスを液体にする為に投入するエネルギー量が大きく(約1kWh/Nm3、11kWh/kg)、また、貯蔵タンクは蒸発(ボイルオフ)を防ぐ高断熱化を要す。 この様な状況下、消去法からか、現在は高圧縮水素ガスが採用されている。
乗用車に積載可能な燃料タンク容積は、100リッターほど。 現在の燃料電池の発電効率でガソリン車並みの航続距離を確保するには、このタンク容量の約700倍の水素ガスが必要になる。 逆算すると、700分の1に高圧縮した水素ガスをタンクに充填しなければならない。
MIRAIの水素タンクは、前方60L(45kg)と後方62.4L(47kg)の2基
Image via FCV(燃料電池自動車)適正処理/回収・リサイクルマニュアル
Image via FCV(燃料電池自動車)適正処理/回収・リサイクルマニュアル
高圧縮された水素を封入するタンクは、金属で強度を確保しようとすると肉厚となり、空でも200kg近くになってしまう。 しかし、炭素繊維強化プラスチックCFRPを主とした高強度材料を用いた三層構造にする事で、強度確保と軽量化が可能になり、約半分の約92kg(MIRAI)になった。 容積や重量は、CNG車やLPG車とほぼ同じである。 尚、この高圧水素タンクは、世界統一技術基準(GTR容器)の基になっている。 (※高圧水素容器/水素自動車の最高充填圧力87.5MPa/公称使用圧力70MPa、マイナス40℃~85℃)
現在、世界基準となった燃料電池車FCVの水素タンク圧力は70MPa。 水素ステーションでは更に高い82MPaでの貯蔵となっている。 この圧力は大気圧の約700倍、及び820倍で、水素ガスの体積は約700分の1になる。 気体は圧縮されると温度が上昇するので、仮に断熱圧縮で単純計算すると、1800℃近い現実離れした温度上昇となる。 気体の圧縮と発生する熱の冷却には、大きなエネルギーが必要になる。
例えばトヨタの燃料電池車FCV Miraiの122.4リットル水素タンクには、1気圧(0.1MPa)20℃の水素ガスで換算すると、約84.6キロリットル(約7.06kg)の圧縮水素ガスが貯蔵できる。 タンク残量圧10MPaから開始して70MPaまで充填すると、約6.08kg(1気圧20℃換算で72.5キロリットル)の水素ガスが補充される。
水素ガス製造時の0.1MPaから82MPaへ圧縮されて70Mpaでタンクに充填されるまでの仕事量を計算すると、約30.6kWh/6.08kg(110MJ/6.08kg、5.04kWh/kg、18.2MJ/kg、453Wh/Nm3、電気代 約83円/kg)になる。 この電力 約30kWhがあれば、電気自動車BEVなら約300kmも走行できる。 (※1気圧0.1MPa 20℃から70MPaへ圧縮する理論上の仕事量は、等温圧縮で7.9MJ/kg、断熱圧縮で16.8MJ/kgとなる。)
オフサイト型水素ステーションで供給される圧縮水素
水素ステーションで82MPaへ高圧縮された水素ガスは、ディスペンサーから燃料電池車FCVの水素タンクに充填されて70MPaに下がる。 通常、膨張して圧力が下がれば温度も下がるが、水素ガスの場合は逆。 ジュール・トムソン効果により、ホースやノズル等の狭路を流れる際に水素ガスの温度は上昇する。 その為、充填する水素ガスを冷凍機でマイナス40℃に冷却(プレクール)している。 また、過充填や水素タンクの過負荷を防止する為、タンク内の圧力と温度情報をFCVからディスペンサーに送る通信充填が採用され、外気温も考慮した水素充填制御になっている。
水素ガスは高圧縮するほど運搬や貯蔵の効率は上がる。 しかし、圧力に比例して圧縮/冷却に要するエネルギーが増え、単に充電だけのEVに比べて余分なCO2排出の要因になっている。 その為、ホンダでは開発初期からClarityの初期モデル(2008年 FCX Clarity)まで水素ガス充填圧力を70MPaの半分の35MPaに設定していた。 35MPaであれば、従来のエンジン車よりもWell-to-WheellでCO2を削減できるが、70MPaではかえってCO2排出量を増やしてしまうと試算していたようだ。
現在、日本には約100ヶ所に水素ステーションがあり、35MPa車専用の40MPa水素ステーション、35と75MPa両車対応の80MPa水素ステーションの2タイプとなっている。 35MPaの充填ノズルは70MPa車でも使えるので、70MPa車は35MPa/70MPaいずれも利用可能。 逆に、70MPaの充填ノズルは、35MPa車に接続できない仕組みになっている。 また、満充填に近い70MPa車に35MPaノズルを接続しても、水素ガスが逆流する事はない。
水素製造装置(水蒸気改質炉と水素精製装置)
左:炭化水素系燃料を約800℃で水蒸気と反応させ、CO2と水素を製造
右:圧力変動吸着法(PSA法)により、水素を分離して純度を向上
Image via car.watch.impress.co.jp
左:炭化水素系燃料を約800℃で水蒸気と反応させ、CO2と水素を製造
右:圧力変動吸着法(PSA法)により、水素を分離して純度を向上
Image via car.watch.impress.co.jp
水素ステーションでは、都市ガスやLPガスから水素を自前で製造/圧縮して販売したり、外部から購入した水素を圧縮して販売している。 前者はオンサイト型、後者はオフサイト型と呼ばれている。 大規模な水素製造装置で水素を製造した方が効率が良いが、運搬には高圧(45MPa)水素専用のタンクローリー(約4千万円/台)が必要になる。 それ故、工業用(光ファイバーや半導体製造)の水素は、オンサイト(自家製造)が主流で都市ガス、天然ガスLNGやメタノールから製造されている。 この水素製造装置は実用化が進んでおり、経済性も良い。
水素製造コストとCO2排出量は、下記の熱化学方程式にて試算
改質反応+シフト反応:CnHm+2nH2O → nCO2+(2n+m/2)H2-Q1(吸熱)
燃焼:CnHm+(n+m/4)O2 → nCO2+m/2H2O+Q2(発熱)
改質反応+シフト反応:CnHm+2nH2O → nCO2+(2n+m/2)H2-Q1(吸熱)
燃焼:CnHm+(n+m/4)O2 → nCO2+m/2H2O+Q2(発熱)
現状のオンサイト型では、水蒸気改質で化石燃料から水素を製造しており、A重油を原料にすれば約280円で水素1kgが製造できる。 しかし、燃料となる水素製造でCO2を約11kgも排出している。 このCO2重量を走行1kmあたりで消費される水素重量(約0.01kg/km)で乗して、走行1kmのCO2排出量に換算すると、燃焼式エンジン車が走行で排出する量に近くなる。 燃料電池車FCVや電気自動車BEVは走行中に(Tanl-to-Wheelでは)CO2を排出しないが、電気や水素の製造で(Well-to-Tankで)燃焼式エンジン車よりも多くのCO2を排出している。
Well-to-Wheelで、1km走行で排出されるCO2の重量
Source from Jari JHFC 総合効率検討結果 or hysut.or.jp
利用段階でCO2を排出しない水素は、低炭素型のエネルギー媒体として有望で、様々なエネルギー源から製造することが可能。 但し、原料や製造方法によってコストや意義が大きく異なる。 上記通り、原料に化石燃料を用いると、製造段階で大量のCO2を排出する。 CO2回収/貯蔵にCCSを導入すると、電力コストや減価償却費を含めた水素製造コストは30~40パーセントも跳ね上がる。
水電解に再生可能エネルギー(風力や太陽光発電など)由来の電力が投入できれば、CO2の排出量が削減できる。 ただ、水素1kgの製造に必要な電力 約50kWhがあれば、電気自動車BEVなら約500kmも走行できる。 製造や圧縮で大量のエネルギーを消費し、且つ、製造方法によってはCO2を大量に排出する水素だが、貯蔵・運搬できるエネルギー媒体としてのメリットが大きい。 電力を水素等のガスに変換する”Power to Gas”が、再生可能エネルギーの間欠性やムラを補う方法の一つになる。
ホンダが、高効率の水素供給システムを2018年11月21日より販売を開始している。 固体高分子膜を用いた差圧式高圧水電解システム「Power Creator」で、水素製造能力は、2.5kg/日。 製造圧力82MPaで、貯蔵量は約11kg。 特筆すべきは、一般的な水電解(常圧)で必要だった除湿や圧縮に要するエネルギーを4分の1に減らしている事。 グラフより、約1180W/m3-H2(13.8kW/kg)から、約270W/m3-H2(3.8kW/kg)になっている事が読み取れる。
2016年に江東区青海に設置された実証実験用の70MPa SHS
SHS:Smart Hydrogen Station:スマート水素ステーション
Image via honda.co.jp, Source via jcpage.jp
SHS:Smart Hydrogen Station:スマート水素ステーション
Image via honda.co.jp, Source via jcpage.jp
次の記事 「Fuel Cell #4 燃料電池の種類」へ続く。
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